連載第4回 WBCチェコチーム奮戦記

連載第4回 WBCチェコチーム奮戦記

ハジム監督
「チェコチームの出場は奇跡ではありません」と語るハジム監督     (チェコ大使館で)

★ 日本での試合まで

 ある報道記者は、東京ドームへ初めて入った時のチェコチームの様子を「まるで修学旅行の生徒たちのようだった」と評しました。選手たちは東京ドームへ入ったとたん「すごーい! 天井のある野球場なんて、初めてだ!」「こんな大きな球場で試合ができるなんて・・・」と、大感激をそのまま表現したのです。そうです。チェコの野球場に屋根付きはありません。そして、チェコ野球チームは、完全なアマチュアチームなのです。選手たちはそれぞれに、仕事を持っています。先生、消防士、学生、サラリーマンと、さまざまです。

 ヨーロッパ予選を勝ち抜いたこと自体、奇跡だと言われてもいましたが、このWBC戦の結果でチェコの実力は認められるでしょう。前日のチェコ大使館での記者会見で、ハジム監督は「みんなが、チェコチームのWBC への参加は奇跡だと言いますが、これは決して奇跡ではありません」とはっきりと宣言しました。そして「日本の実力は知っています。平幕力士が横綱に立ち向かう気持ちで頑張ります!」と話してくれました。

★ 逆転劇の対中国戦

 さて次の日は、春の到来を告げるかのような暖かな3月10日。WBCのチェコ共和国対中国の予選リーグ試合を応援に、東京ドームへ行きました。チェコ対中国の試合は、あまり人気のない組み合わせだから客席はガラガラだろうという前評判。

プラハから駆けつけたという陽気なお二人

 まあ、そんなものだろう、と地下鉄丸の内線「後楽園駅」を下車。東京ドームへ向かうと、ガラガラのはずの各入口は、黒山の人だかり。待ち合わせ場所の22番入口は、正面のせいか、さらにすごい人の列なのでした。列に並んでいますと、胸にČESKOと書かれたTシャツのチェコ人応援者たちが次々と登場。11時に入場開始の東京ドーム内の空間は、天井も白を基調にしているせいか、ますます春めいてみえます。

 

チェコのリードに盛り上がるチェコ応援団
チェコのリードに盛り上がるチェコ応援団

  12時、選手入場、国歌・・・いよいよ戦いが始まりました!先攻はチェコ。1番打者が、いきなり初球をヒット! 1塁へ。さらにヒットが続き、初回にチェコは2得点で、応援席は、いやが上にも盛り上がります。勢いづいたチェコは、3回にも1点。5回に中国に1点を取られたとはいえ、楽勝ムードが漂っていました。6回にも1点を加えて、4対1と終始リード。このまま勝てる・・・と思ったのですが、気が早かった・・・7回裏にチェコ投手のフォアボールが続いて、中国が4得点。これで4対5と、中国が逆転。中国の応援団も、次第に活気づき、チェコは形勢不利! 

最終回逆転劇を表すスコアボード
最終回逆転劇を表すスコアボード

 さあ、いよいよ最終回の攻撃だ。「もうこの9回しかないぞ!」と叫ぶチェコ応援団。全員の手拍と女性の声援も響くチェコ応援団席は賑やかになりました。しかし、9回も1アウト。万事休すか、とチェコびいきの日本人応援団にもかすかな吐息がもれたとたん、素晴らしいホームラン!「ヴィーボルニェ!すごい!!」チェコチームは、9回に3点を加えて7対5と、奇跡の逆転劇を演じたのでした!応援席の喜びは頂点に達し、躍り上がって喜ぶチェコ人、そして日本人。初戦を逆転劇勝利で飾り、次回WBCへの出場権を獲得したチェコチームの喜びはひとしおでした。

対中国戦に逆転勝利して、応援席に挨拶して手を振るチェコ選手たち
対中国戦に逆転勝利して、応援席に挨拶して手を振るチェコ選手たち

 韓国戦、オーストラリア戦、そして日本戦には負けましたが、チェコチームの爽やかで礼儀正しいスポーツマン精神野球は、日本人の心をつかみ、チェコチームの好感度は最高でした。中国戦に勝ったことで、次回のWBCへの出場権も得ました。

チェコチーム ばんざーい! 

(つづく)


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